カテゴリ:不動産を売る / 更新日付:2025/01/03 00:00 / 投稿日付:2025/01/03 09:00
道路拡張や再開発といった理由で、突然立ち退きを求められた場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。再開発後に新しい住居を提供されるケースもありますが、多くの場合、立ち退き料を受け取り、それをもとに引っ越しを進めることになります。
この記事では、持ち家における立ち退き料の相場や、立ち退き料で損をしないためのポイントについて詳しく解説します。
POINT
・持ち家の立退料の相場
・持ち家で立退料がもらえるケース
・分譲マンションでも立退料はもらえる?
・多くもらえるコツ
■持ち家の立退料の相場
▶突然立ち退きを求められたら、不安を感じるのは当然のことです。
そんなときには、まず立ち退き料の相場や計算方法など、基本的な知識をしっかりと把握することが大切です。
立ち退き料とは、公共事業や民間の開発計画によって土地や建物を明け渡す際に、移転費用やそれに伴う損失を補填するために支払われる金銭のことを指します。
この立ち退き料には、単に住居を手放すための補償だけでなく、住み慣れた環境を離れることで生じる精神的な負担や、新しい生活を始めるための慰謝料といった意味合いも含まれています。
しかし、借地契約の終了に伴う立ち退きの場合は、相手が個人であることが多いため、提示された金額が妥当かどうか注意が必要です。不当な金額が提示される可能性もあるため、弁護士などの専門家に相談しながら慎重に対応することが求められます。
立ち退きには、「土地区画整理」や「都市計画道路」などの公的なケースと、「借地契約の解約」による私的なケースの2種類があります。
□公的な立ち退き料(例:土地区画整理・都市計画道路)
行政が主導する公的な立ち退きの場合、立ち退き料の額は、主に不動産の資産価値によって変動します。ただし、基準となるのは「建物再建築価格」(現在の家を新築した場合の費用)であるため、多くの場合、資産価値よりも高い補償が期待できます。
□立ち退き料の内訳例
・建物再建築価格:新築のための建築費用
・解体費用:例として木造30坪2階建てで100~120万円
・移転費用:20~30万円程度
・仮住まい費用:家賃7万円×12ヶ月で70~80万円
・精神的苦痛に対する補償
このように、新居の建築費用だけでなく、解体費用や引越し代、仮住まいの費用、さらに立ち退きに伴う精神的負担への補償も含まれるのが一般的です。
また、土地に関しては「換地」と呼ばれる方法が取られることが多く、同等の資産価値を持つ別の土地が提供されるケースが一般的です。その場合、土地に対する現金補償は行われません。
□私的な立ち退き料(例:借地契約の解約)
借地契約解約による立ち退き料も、公的なケースと同様の補償内容が基本となります。ただし、換地は行われないため、土地に対する補償金が支払われます。
注意点として、借地契約解約の場合、立ち退き料を支払うのは個人であることが多く、提示された金額が相場とかけ離れている場合があります。特に、建物再建築価格や解体費用については専門知識がないと低い金額を提示されても気づきにくいことがあります。
さらに、借地権は借主の権利が強いため、正当な理由がなければ立ち退きを求めること自体ができません。このため、借地契約に関する立ち退きでは、正当性の有無を含めて弁護士などの専門家に相談することが重要です。
■立退料の算出方法
公的な立ち退き料は、建物の構造や築年数などをもとに、自治体が独自の基準で算出します。解体費用や移転費用、仮住まい費用については、一般的な市場相場が基準として用いられます。
新居に関しては、現在の家を同じ仕様で新築した場合の費用が基準になります。近年の建築資材価格や設備のグレードの上昇を考慮すると、当初の購入時の価格よりも高い補償を受けられる可能性が高いです。
一方、借地契約が解除される場合、借地権を貸主に売却するという形で補償が行われることが一般的です。この場合、補償額は「土地の評価額 × 借地権割合」によって算出されます。土地の評価額は通常、路線価が基準となり、路線価図には借地権割合が記載されています。
ただし、借地上に自宅を建てて住んでいる場合、立ち退きによる負担が非常に大きいため、借主には持ち家の買い取りを貸主に要求する権利が認められています。
また、家を売却する際は、不動産一括査定サービスを利用すると便利です。簡単な入力で複数の会社から査定結果を比較できるため、より高く、早く売却できる可能性が高まります。
■持ち家で立退料がもらえるケース
▶必ず立ち退き料がもらえるのかどうか、初めて立ち退きを要求された人は、非常に不安を感じているはずです。
そこで、土地区画整理事業・都市計画道路・借地契約解除の3パターンごとに、立ち退き料がもらえる条件について解説していきます。
土地区画整理事業とは、都市の計画的な発展や公共の利益を目的としたプロジェクトの総称です。この事業では、道路、公園、下水道などのインフラを整備し、より便利で住みやすい街をつくるため、該当エリアの住民が土地を手放す必要があります。
公的な事業であるため、基本的に立ち退きを拒否することは難しいと考えられます。その代わりとして、新しい家を建てるための費用や引越しにかかる費用など、立ち退き料が支払われます。
また、土地に関しては、区画整理後に新しい区画へ戻る選択肢もあります。もし他の場所へ移転する場合は、代替地(換地)が提供されるか、現在の土地と同等の価値を持つ金銭的な補償を受けることが可能です。
■都市計画道路による立ち退き
都市計画道路とは、都市部の交通をスムーズにするために新設または拡張される大規模な幹線道路のことです。これは都市計画法に基づく大規模な再開発プロジェクトですが、すべての計画がすぐに工事に着手されるわけではありません。
中には、着工まで数十年かかるケースもあり、計画区域内の土地や建物も通常通り売買されることが珍しくありません。しかし、工事が正式に決定すると、その土地や建物は立ち退きの対象となります。
この場合、土地区画整理事業と同様に立ち退き料が支払われることで解決が図られます。ただし、土地区画整理とは異なり、都市計画道路に指定された土地は道路として利用されるため、元の場所に戻ることはできません。そのため、周辺の別の土地が提供されることもなく、金銭的な補償のみが行われます。
■借地契約解除による立ち退き
借地上に自宅を建てる場合、土地の所有者と借主との間で借地契約を結ぶことになります。一般的な借地契約の期間は原則30年ですが、契約期間が終了しても建物が存在している場合、多くの場合は契約が自動的に更新されます。
もし建て替えが必要になり、地主がこれを拒否したとしても、裁判になれば建て替えが認められるケースがほとんどです。つまり、借地契約においては借主の権利が非常に強く保護されており、正当な理由がなければ契約の解除はできません。
ただし、地主が土地を利用する必要性が借主の必要性を上回ると判断された場合には、契約解除が認められることもあります。しかし、「将来的に子どもに土地を引き継ぎたい」や「売却して資金を得たい」といった理由では、正当な事由とは見なされないことが一般的です。
さらに、仮に契約解除が認められたとしても、現在その土地に建物を所有している借主に退去してもらうためには、立ち退き料が必要となります。この立ち退き料の金額は、借地権の価値を基準に計算されることが多いでしょう。また、建物を失うことに対する補償として、建物の買い取り費用も発生します。
■分譲マンションでも立退料はもらえる?
▶分譲マンションであっても、建物の老朽化などにより立ち退きを迫られるケースが考えられます。
分譲マンションも持ち家同様に立ち退き料がもらえるのか、確認していきましょう。
■建て替えの場合もらえない
マンション建て替えの場合、立ち退き料が支払われることはありません。マンションが老朽化し、建て替えが決定すると、建て替え計画への参加の意思を問われます。建て替えに賛同し、必要な費用を負担すれば、完成後のマンションに再び入居することができます。
一方、建て替えに参加しない場合は、管理組合から売渡請求権が行使されることになります。その場合、所有する持分を時価で売却することを強制されます。立ち退き料は支払われないため、売却代金と修繕積立金の清算額をもとに、新しい住まいを見つける必要があります。
■再開発の場合の対応方法
再開発によって新しいマンションが建設される場合、主に二つの対応方法があります。
権利変換を行う
権利変換とは、現在所有しているマンションの区分所有権を放棄し、その代わりに再開発後のマンションに新しい部屋を割り当ててもらう方法です。立地に不満がない場合は、立ち退きよりも権利変換を選択することをおすすめします。手続きも簡便で、新築のマンションにスムーズに住み替えることができるからです。
都市計画法では、「新しい部屋の価値が以前所有していたマンションの価値と大きな差がないようにする」と規定されています。
しかし、必ずしも同じ程度の部屋が提供されるわけではありません。もし、新しい部屋が明らかに前の部屋よりも価値が低いと感じた場合、弁護士に依頼して適正な資産価値を調査してもらうことが重要です。弁護士を通じて交渉すれば、適切な価値の部屋に変更してもらえる可能性が高いです。
立ち退き料を受け取って譲渡する
再開発による立ち退きで、別の場所に引っ越したい場合は、立ち退き料を受け取って区分所有権を譲渡する選択肢があります。
重要なのは、立ち退き料の金額です。理想的には、現在のマンションと同等の物件に引っ越せる金額が基準になります。ただし、立ち退き料の算出方法には法的な基準がないため、提示された金額が実際の市場価格と乖離していることもあります。
一般の人は、提示された金額が適正かどうか判断するのが難しいため、契約前に弁護士に相談することを強く推奨します。正式に合意してしまうと、基本的にその金額について交渉することはできません。
■空き家の解体・撤去の補助金
空き家や解体工事に対する補助金は、解体費用の一部を住民が負担する制度です。 この制度は、老朽化や危険な状態にある空き家を解体することで、地域の安全性を向上させます。
そのため、危険な状態にある空き家や「特定空き家」に指定されている物件は、補助対象として認められやすい傾向があります。
なお、補助金や助成金を利用する際には、自治体が指定する地域内の業者を使用することがされる場合があります。申請を進める前に、条件や要件をしっかり確認しておきましょう。
■多くもらえるコツ
▶ここまで何回もお伝えしているように、立ち退き料の算出方法に厳密な決まりはありません。
そのため、こちらの対応しだいで立ち退き料をアップさせることも十分可能です。最後に、立ち退き料を多くもらうコツを3点ご紹介します。
■市場価格をチェックしておく
立ち退き料の交渉を進めるうえで、市場価格の確認は欠かせません。なぜなら、政府や自治体、または貸主が、市場の平均価格に基づいた金額を提示してくるとは限らないからです。
予算に制限がある場合や、支出をできるだけ抑えたいという理由から、最低限の額を提示されることが多くあります。そのため、売買相場の平均額を把握しておくことで、「その金額は低すぎるので、相場に見合った金額を再考してください」といった交渉が可能になります。
ただし、市場価格を自分で正確に調べるのは難しいのが現実です。交渉を有利に進めるためには、不動産鑑定士に依頼し、正式に鑑定を受けるのが最も効果的です。
■借主の正当性をできるだけ多く提示する
借地契約の解除が問題となった場合、借主は自分がその土地に住み続ける正当な理由をできるだけ多く挙げることが重要です。前述のように、借地権の解除には、地主と借主の主張する正当性を比較することになるため、住み続ける理由を詳しく述べることで、立ち退きを回避する可能性を高めることができます。
たとえ立ち退きを受け入れる場合でも、借主が持つ正当性を強調することで、立ち退き料を増額できる可能性があります。以下のような具体的な対策を講じることをお勧めします。
- ・契約違反がないことや、契約を遵守してきた履歴を強調する
- ・自宅の修繕履歴や維持管理費用、リフォーム費用などの明細を準備する
- ・立ち退きによる不利益を整理する(例: 近隣関係の喪失、病気による移転の負担など)
- ・過去の判例を調べる(必要に応じて弁護士に相談する)
■弁護士に交渉を依頼する
立ち退き料をアップさせたいなら、弁護士に交渉を依頼しましょう。依頼費用はかかりますが、依頼費用以上の増額分をもたらしてくれる可能性は非常に高いです。さらに、弁護士に依頼すれば、煩わしく精神的に負担の大きい交渉事をする必要がなくなります。
まず、弁護士が交渉を代行するとなれば、相手も無茶な金額を提示してきません。弁護士は過去の判例などにも精通しているため、相場から大きく乖離した金額を提示しても相手にされないと相手も理解しているからです。
また、条件がうまくまとまらないときでも、弁護士ならギリギリのラインを狙って粘り強い交渉ができます。場数を経験している行政側と素人が1対1で交渉をしたら、おそらく精神的に参ってしまうでしょう。
もちろん、依頼するなら、立ち退き関連の交渉を得意とする弁護士を選ばなくてはいけません。ホームページで立ち退き交渉の実績が豊富かどうか、契約前にしっかりと確認してください。
■まとめ
借地契約の解除が問題となった場合、借主は自分がその土地に住み続ける正当な理由をできるだけ多く挙げることが重要です。前述のように、借地権の解除には、地主と借主の主張する正当性を比較することになるため、住み続ける理由を詳しく述べることで、立ち退きを回避する可能性を高めることができます。
たとえ立ち退きを受け入れる場合でも、借主が持つ正当性を強調することで、立ち退き料を増額できる可能性があります。以下のような具体的な対策を講じることをお勧めします。
- ・契約違反がないことや、契約を遵守してきた履歴を強調する
- ・自宅の修繕履歴や維持管理費用、リフォーム費用などの明細を準備する
- ・立ち退きによる不利益を整理する(例: 近隣関係の喪失、病気による移転の負担など)
- ・過去の判例を調べる(必要に応じて弁護士に相談する)
■まとめ
多くの人は、これまで立ち退きを求められるような経験はないでしょう。一方で、相手側はおそらく数多くの立ち退き交渉を行ってきた経験者ばかりです。こうした状況では、準備なしで交渉に臨むと、かなり不利な立場に立たされることになります。
このため、この記事の内容を参考にして、しっかりと準備を整えてください。正式な交渉に入る前には、弁護士に相談することを強くお勧めします。
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